記憶 ―黄昏の蝶―


院長室の扉の前で、
俺たちは寄り添って耳を傾けていた。

正確には、ビビだけは大人の言い付けを守ろうと、俺たちの服を必死に引っ張り扉から離そうとしていたのだが、

「――…まさか!!」

ジークの大きな声を聞いて肩を震わせ、大人しく俺たちに加わった。


「いやいやいや…、院長。俺には、リュウもカイトも同じ…ただの悪戯好きの子供にしか見えねぇよ…。その夢、リュウの嘘じゃないのか?」

「リュウは嘘はつかんよ。」

俺たちの予想では、カイトの話をしているはずだった。

どうして、じぃさんが俺に関係の無いジークにその話をしているのか、検討もつかなかった。


「…院長…」

「毎夜、昔からよく夢にぐずる子じゃった…。しかし幾らわしが内容を聞いても、首を振るばかりで答えはしなかったのぅ。言えなかったんじゃな…。」


「…まさか…」

「リュウは独りで苦しんでいたんじゃ…。友達は皆、楽しい夢を見ている中で、自分には前世が無い…と、普通じゃないんだ…と今も泣いておる。」


ハッと俺は2人を見た。
特別仲の良い2人にさえ、言ってはいなかった。

カイトとビビは呆然と、信じられないと瞳を見開き口を開け、ただ俺の顔を見ていた。

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