記憶 ―黄昏の蝶―



暗い闇の中、
沢山のランプが揺れていた。


広場半周を囲む露店のランプは、普段の生活から使用している「橙色」。

昨日から広場に在ったそれが、一層に数を増す。
訪れた大勢の人々の手にもまた、一人一人ランプを吊り下げて歩いているからだ。


「…今年もまた…沢山の人が集まりましたねぇ…」

広場の最終確認をも兼ねて、俺が露店地区を歩いていると、住民たちは闇夜に輝く「金色の首飾り」に一礼を繰り返した。

「リュウ様…」
「あぁ、リュウ様…」

俺も、お得意の笑顔を返す。
まぁ…正直、面倒だが。

この光祭りが協会最大の催しなわけだし、これを越えれば幾らか楽になる。


「皆さん、ちゃんとランプ持参されてますよね?」

「はい、勿論。」
「えぇ、家周りの全ての物を。」

街に在るランプ、
なるべく全てをこの光祭りに…

それが定められた決まり。


「闇への感謝」――

光の季節には必要の無くなる物を、人々が広場に持ち寄る。

神の光の前では、
人工的な光は意味を成さない。

それ程に世界は一変し、
街は白い光に包まれるのだ。

広場には人々の持ち寄った橙色のランプがところ狭しと並び、街の全ての光が集結していた。


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