記憶 ―黄昏の蝶―
「…土~、土は要らないか~?奥さん、自宅の庭に植物を!光の季節がやって来るよ~!」
露店の店主たちの声の中に、聞き慣れた声が混じっていた。
げ…、カイト…
見つかると面倒だ…
俺はその店先から距離を取って歩いたが、何せ奴は鼻が利く。
「土だよ~!貴重な貴重な、土はいかが!今なら一瓶おまけしちゃうよ~!……あ、リュウ……様。孤児院の庭にいかがですかぁ~?子供たちに!」
…あぁ…何故バレた。
お前の嗅覚は異常だよ!
ってゆうかお前、
貴重な土をおまけして一瓶付けちゃうってどうよ!
つうか、貴重な土で商売してんじゃねぇよ…
などと一瞬にして色んな言葉は出そうにはなるが、にこやかに一礼して俺は去った。
「…あぁ~、リュウ様ぁ。どうして行っちゃうの~?」
両手に瓶入りの土を持って、猫なで声を出すカイトに苛々しながら、何とか笑顔を貫いた。
うるせぇな…
お前と話すと、外向きの俺の姿にボロが出るんだよ!
奴はそれを理解して俺をからかっているに過ぎないのだ。
「…土売りね…」
そう呟き溜め息をつきながら、俺に近付く白ケープが居た。
俺が瞳を向けると、
首元には、「銀色の首飾り」。
協会の幹部だ。