記憶 ―黄昏の蝶―
1つ目。
カイトの見る前世の夢には、「土」が沢山在る。
子供たちにとっては夢の様な大地で、カイトは仲間に囲まれ大地を駆け回り、ヤキュウをして過ごす。
踏みしめる土の感覚に魅せられていた。
2つ目。
定職に就けば、孤児院を離れる事になる。
俺を心配して、幼少を過ごした俺たち仲間と離れる事が惜しくて、残っているのだろうと予想はつく。
3つ目。
ジークも言っている通り、母親と双子の兄を亡くした理由。
2人のかかった病に利く薬は、貴重な植物を煎じた物だった。
薬品の不足。
その植物を育てる為には、良質の土の在る広い大地が必要だった。
それが、この街には無かった。
3つの理由の内、
潜在的にカイトの心を占めているのは、これが1番大きいのではないかと俺は思う。
「…そろそろ時間じゃないか?」
ジークがそう呟き、俺も広場の中心に瞳を向けた。
祭壇の在る中心に用意された青いランプが灯り出し、法皇を迎える準備が始められていた。
「…さて、上品な協会幹部の顔に戻りますか…」
「えぇ、リュウ様は法皇のお出迎えをお願い致します。」
「かしこまりました。」
俺たちは嫌味を込めて笑い合うと、青い光の元へ急いだ。