記憶 ―黄昏の蝶―
カラン、カラン…
そう闇夜に響くのは、
法皇の杖の先の鈴の音。
広場の中心には、神聖な雰囲気を演出する透き通った青色のランプが至る所に灯されていた。
大層な祭壇。
そこに立った法皇が、静まる住民に声を掛ける。
「さぁ、皆さん。光の季節が来る前に、まずは闇の季節への感謝を……!」
祭壇からは青色の長い敷物。
その両端に、多くの住民が腰掛ける細工が付いた長椅子が幾つも並ぶ。
住民たちは皆揃って、
空の闇を見上げていた。
「…闇の季節にも、皆の生活に様々な事がありましたね…。新しい命が生まれ、また光の元へ還る命もあったはず…」
青い光に包まれて、
向こうの橙色の光に目が眩む。
住民たちが持ち寄ったランプは、その集団を囲む様に、広場の外側に並べられていた。
「さぁ…闇への感謝を済ませたら、『神の光』を待ちましょう…。また暗いこの世界を照らしてくれます様に…」
誰もが法皇の言葉に耳を傾け、闇夜を仰ぐ。
カラン、カラン…
静寂に包まれる広場の中心で、
『こないだ迄と鈴の音が違う…。じじぃめ、張り切って杖の「鈴」を新調しやがったな…』
などと思いながら、
白ケープの集団の先頭で暇を潰していた。