記憶 ―黄昏の蝶―
普段以上に多くの住民の相手をしなくてはならない為に、俺にとっては儀式自体は面倒だ。
穏やかに上品に、
その仮面を被っている時間がどうしても長くなる。
しかし、
この幻想的な空間を楽しみに待っている子供たちや、季節の移り変わりに歓声を上げる住民の笑顔は…
どうしたって、
嫌いにはなれない。
協会の仕事ややり方を心から好きにはなれないが、
『この街の皆さんの幸せな笑顔が、私たち協会の人間にとっては1番の喜びです』
という台詞には、
少なからず共感出来てしまう。
俺にとっての家族。
父親代わりであるじぃさんや、ビビやカイト、孤児院で暮らす子供たち1人1人。
皆の笑顔を守る事が、
俺にとっての幸せなのだと、
もう実感してしまっているのだから…。
毎年毎年、
当たり前の様に繰り返し行われてきた催事。
この日常は、
俺が守りたい世界は、
壊れる事がなく当たり前に続くのだと思っていた。