記憶 ―黄昏の蝶―


行ったり来たり…。
…全くだ。

水場であるカロリスは、この星の面積の半分を占める。

人の住める陸地が点々とするカロリスの中、その陸地が割りと集結している場所にこの街は在るのだが…

それにしたって、
この水上の街は広い。


広場は3番地。
そこでの片付けを早々に終えた俺は、この舟師を掴まえて10番地に移動。

10番地で、男手の無い老婆の家財道具や衣類の日乾しを手伝っていた。
親切なこの舟師まで、幸運な事にその作業に協力してくれ…、

そこへ、
協会からの伝達放送。

カラン、カラン…
あの嫌いな鈴の音とともに…。

催事に法皇が鳴らす杖の鈴は、普段は協会から住民に向けた「呼び鈴」に代わる。


『金首飾りリュウ様、法皇様がお呼びでございます。本日中に協会本部までお戻り願います』


――嫌でーす…
…俺、無視したーい…

カイト調に聞かなかった事にしようとしても、街中に流れる協会の放送。

親切な舟師も、街中の皆も、
まぁ丁寧にわざわざ出向いてまで教えてくれるもんだから、あぁ逃げられやしねぇ…。


協会本部は、1番地。

1から3番地が街の中心部。
そこから円を描く様に、離れる程に番地に付く数字は上がっていく。

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