記憶 ―黄昏の蝶―


しかし舟師は細かい事は気にしない人の様で、「そうですね」と大口を開いて笑っていた。


「やはり、リュウ様が法皇様の後を継ぐのですか?」

「――はい!?」

何でそうなる!?
あ、「ご老体」流れでか?


「皆も噂してますよ?法皇様もお年ですし。引退だなんて口にしたら怒られるでしょうが…。あ、出しちゃいましたけど…。」

舟師は人差し指を口に当て、「秘密でお願いします」と悪びれずに笑う。

この舟師は嫌いじゃねぇな…。

しかし内容は笑えない。
法皇の後を継ぐなんて御免だ。


「いえいえ、そんなお話はありませんよ!第一、私はそんな寛大な器ではありません。」

「そうですかぁ?金首飾りをしてらっしゃるし、そうなのかと…。リュウ様だったら俺たちも申し分無いですよ~?」

「そんな恐れ多い…」


金色の首飾り。
更には協会の白いケープに入った金色の刺繍。

協会からの嫌いな支給物。

協会職員には首元に首飾りを付けられるが、全員「銀色」の輪。
幹部に上がれば、白いケープに「銀色」の刺繍が入る。

「金色」を付けられているのが、法皇であるじじぃと、光の子である俺だけ。

< 66 / 238 >

この作品をシェア

pagetop