記憶 ―黄昏の蝶―


1階部分は、広いホール。

俺はその真っ青な絨毯の上を突っ切る様に真っ直ぐに歩くと、奥の壁中央に在る螺旋階段を上がっていく。

協会の象徴とする色は青と白。
年季の入った白い壁に、青色の敷物が館内の基調となっている。


2階は住民関係の事務処理をするフロアになっており、住民たちも多い。

3階には協会職員の事務所があり、幹部たちが何やら慌てて走り回っていた。

何人かは螺旋階段の俺に気が付いた様だが、下手に声を掛けると俺の仕事が増えるので無視。


4階は会議室や資料室。

そして、
最上階の5階まで階段を登ると、俺の苛立ちもピークだ。


――トントン…

法皇の部屋の扉を叩く。

「どうぞ?」

「只今戻りました。お呼びでしょうか…?」

扉を開け頭を下げ、瞳を部屋に戻すと、毅然と椅子に腰掛ける法皇の姿。


「リュウか?遅かったな。」

「…っ、…申し訳ありません」

だからね?
俺は10番地に居た訳よ?


「…今、舌打ちが聞こえた様な気がしたが…気のせいか?」

「――気のせいです。」

法皇の瞳、
黒目と呼ばれる部分は、白い。

光の季節に空に現れる、神聖な白い星と同様に、白い球体は人々に崇められる。

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