記憶 ―黄昏の蝶―
じぃさんの分のお茶を用意しようとビビが立ち上がるが、じぃさんは「いいよ」と手先で合図し、ビビを座らせた。
「…じぃさんも聞いたんだろ?さっきジークが来てたろ?」
じぃさんは元幹部。
ジークは法皇が遣いによこしたんだろう。
「ふむ、確認を取りになぁ。しかし、わしも知らんかったのぅ…」
じぃさんは昔、先代の法皇に今の法皇と肩を並べて遣えてきた為、信頼も厚く未だに相談事が持ち込まれている。
俺を通せば良いものを、形式だか何だか知らんが、わざわざ別の者を来させる辺りに「頭堅ぇな、じじぃ…」と思う。
まぁ…
面倒なので、御使いやら伝達係りは俺も御免だが。
俺の性格を見抜いての事かもしれない。
「で、じぃさんはどう思う?」
「…リュウの言う『堅物じじぃ』とは同等に扱われたくはないがのぅ、わしも例の人柱だと思うぞ…?」
「…ぁ。そっから聞いてた?」
「あぁ、『じじぃ』呼ばわりはせんでおくれ?我が子にそう呼ばれるのは、ちと応えるでの…」
じぃさんは瞳を細め、柔らかく愉快そうに笑う。
俺もビビも、昔に戻った様に声を揃えて笑っていた。