記憶 ―黄昏の蝶―


翌日の朝、

「リュ~ウく~ん?朝ですよー?行~きましょ~う?」

と、まるでカイトの様な…
オフモード全開のジークの声が孤児院中に響いた。

「やっぱ親子だな」
「やっぱ親子よね」

食堂で朝食を取りながら、俺とビビはそう繰り返した。

「……ちょっと2人とも?何で俺を見るの!?何?ってゆうか、ジーク!朝からウルサイよ?」

俺たちに睨まれたカイトは、その様子を見ていた子供たちにまで笑われていた。


孤児院を後にして、
舟で協会本部を目指しながら、俺はジークに笑顔で毒を吐いていた。

勿論、
住民たちに気付かれない様に。


「…わざわざ迎えに来なくったって、逃げやしねぇよ…」

「……そうか?」

ジークは協会幹部であり、人魚でありながら、舟まで操れる。
舟師を呼ぶ手間も無く、ジークの漕ぐ舟に俺は乗せられた。

不器用な親父だ。

何だかんだ理由を付けて孤児院を訪れ、息子であるカイトの様子を見たいだけなのだ。


「…もうカイトも子供じゃねぇんだし、一緒に住もうって素直に言ったらどうだ?ジーク?」

「………断られた」

白髪混じりの親父の、
子供の様にふて腐れた顔。

あぁ、
朝から良くない物を見た。

< 78 / 238 >

この作品をシェア

pagetop