記憶 ―黄昏の蝶―
翌日の朝、
「リュ~ウく~ん?朝ですよー?行~きましょ~う?」
と、まるでカイトの様な…
オフモード全開のジークの声が孤児院中に響いた。
「やっぱ親子だな」
「やっぱ親子よね」
食堂で朝食を取りながら、俺とビビはそう繰り返した。
「……ちょっと2人とも?何で俺を見るの!?何?ってゆうか、ジーク!朝からウルサイよ?」
俺たちに睨まれたカイトは、その様子を見ていた子供たちにまで笑われていた。
孤児院を後にして、
舟で協会本部を目指しながら、俺はジークに笑顔で毒を吐いていた。
勿論、
住民たちに気付かれない様に。
「…わざわざ迎えに来なくったって、逃げやしねぇよ…」
「……そうか?」
ジークは協会幹部であり、人魚でありながら、舟まで操れる。
舟師を呼ぶ手間も無く、ジークの漕ぐ舟に俺は乗せられた。
不器用な親父だ。
何だかんだ理由を付けて孤児院を訪れ、息子であるカイトの様子を見たいだけなのだ。
「…もうカイトも子供じゃねぇんだし、一緒に住もうって素直に言ったらどうだ?ジーク?」
「………断られた」
白髪混じりの親父の、
子供の様にふて腐れた顔。
あぁ、
朝から良くない物を見た。