記憶 ―黄昏の蝶―
「リュウからもカイトに何とか言ってよ…」
「……嫌だよ」
「リュウ、冷たい!昔からお前の事も、息子の様に可愛がってきたのに!」
やっぱ、よく似た親子だよ。
年の割に、…何てゆうの?
言葉を選べば、……若い。
1番地に着くと、
協会の舟着き場に舟を停め、
俺たちは水の底を目指した。
光の季節に水に入るのは久し振りの事で、子供の頃に戻った様に心が弾んだ。
コポコポ…
俺の肺は水に満たされ、水中の酸素を直接取り込み、吐く息は水面へ上がる。
「あっちだ」と、ジークの動作に導かれて洞窟の入口を探す。
底にも届く水面から差す光に、
俺たちの首飾りがキラキラと反射を繰り返していた。
光合成をする水草が、底でゆらゆらと揺れていて綺麗だった。
「……!!」
天然の洞窟、
それは本当に存在した。
入口は割りと大きく、いかにも天然である事を証明するかの様に、岩肌はゴツゴツといびつに口を開けていた。
「行くぞ」とジークは先に進んだが、俺は少し躊躇った。
崩れるかもしれない、とか…
怖い、とかじゃなく…
……ただ、
「入ってはいけない」と感じた。