記憶 ―黄昏の蝶―
俺が現れない事に気付き戻って来たジークの顔が、「怖いのか?」と憎たらしく笑う。
「ちげぇよ!」と俺は睨み返し、
内部へと、進んだ。
コポコポコポ…
先へ進むと、
それは本当に協会本部の中心。
……コポコポ…コポ…
白い、白い光に包まれて。
「「…………」」
祭壇の様な、
劣化した建造物の上に、
それは在った。
――人柱…
人の姿をした「それ」は、透明な何かに覆われており、恐る恐る触るとヒヤリと冷たく…、本当に氷漬けなんだと分かる。
「「…………」」
俺たちは呆然と見つめ合う事しか出来ず、陸地に帰って意見を交わそうかと頭上を指差した。
疑問は沢山ある。
水温は決して冷たくは無い。
何故、氷は溶けない?
協会本部に在るのなら、
何故、じじぃ共が知らない?
人柱は何故、
白い光に包まれている?
輝く白い星は、頭上の遥か高い場所なのに…
陸地に帰ろうと水を蹴ったその時、俺はジークに服を掴まれ、引き戻された。
「……!?……っ!?」
俺は2度驚いた。
急に引き戻されて。
そして、振り返ると…
「人柱」が、
氷の中で…
――動いていたから。