記憶 ―黄昏の蝶―
『言葉が通じないのは不便ですし、かと言って僕はこの協会とやらは何だか落ち着かない。ならば、リュウ君のお宅へ…』
「――…嫌だよ!ふざけんな。何でお前の面倒を孤児院で俺が見なきゃならねぇんだよ!」
氷から逃がしたのは俺なんだから責任持てと言われたら、それまでだが…
ユピテルは穏やかに笑っているだけで、俺の意見など聞かず、法皇に伝えろと催促した。
法皇は困っていた。
そりゃそうだろ。
協会で法皇である自分がもてなしたいに決まってるのに、問題児の俺に預ける訳だから、心配で仕方がないんだろう。
反対し、勿論止めてくれると思ってたのに…
「…ユピテル様がそう仰るのなら…仕方ありません…」
「――はぁっ!?」
訳の分からない得体の知れない奴を、俺が預かる事になってしまった。
やはり、
洞窟に「入ってはいけない」という俺のあの時の直感は当たっていた訳だ。
面倒くせぇ…
こんなにも複雑で面倒な事は生まれて初めてだよ…
お目付け役にと、ジークまで孤児院へよこす始末。
俺の気が、休まらなくなる。
終いには法皇まで来るとか言い出すんじゃないか、とヒヤヒヤしていた。