記憶 ―黄昏の蝶―
ギィ…
「…じぃさん、居る?」
俺は一足先に孤児院の食堂の扉を開けた。
未だ子供たちは学校の時間。
幸いにも食堂にはじぃさんとビビが揃っていた。
「――リュウ!早いじゃない?」
疲れ果てた俺の姿を見て、ビビは俺が体調を崩して戻ったのかと心配した。
「…何か、あったのかの?」
「…すまん、じぃさん。…大変な事になった…、俺的にも、孤児院的にも…」
「…何じゃ?あれほど心して行けと言ったろう…?」
じぃさんは普段通り、穏やかにそう話した。
昔から、周りが驚く様な悪さを俺がしたとしても、じぃさんだけは大して驚きはしない。
「…人柱の氷、割った…」
「「……は?」」
「あぁ。…で、中身を俺が引き取る事になった…」
「「…中身?」」
じぃさんとビビは声を揃えていたが、俺が手ぶらのまま椅子に座ると、首を傾げていた。
「…中身とは、やはり古代の人間の死体…という事かの?どこじゃ?庭か…?」
じぃさんはそう言うと、確認しようとしたのか、ゆっくりと椅子から立ち上がった。
「…普通そう思うよなぁ?それが、その中身がさぁ…生きてるんだよね…?」