記憶 ―黄昏の蝶―


『…とある街へ…。おそらく今で言う、この水場の反対側。切り立つ絶壁の上…。僕は、そこへ行きます。』


…無理だ、
行けやしねぇよ?
さっきの蝶々じゃあるまいし。


『…僕ならば行けるでしょう。蝶々と同じ様なものだから…』


…蝶々と同じ…?
ふふ、馬鹿を言うなよ…


『蝶々は光を追って移動する…。でも僕は、逆。光から、逃れる為に……きっと飛べる…』


…はぁ?
何を言っている?
お前…何か、思い出したのか?


『…きっと飛べる…。有り難う、リュウ君。僕は行きます。』


止めやしねぇよ。
もう氷から逃れたお前は、
自由だ…

協会のじじぃに付き合ってやる理由は無い…


『……有り難う。でも貴方に迷惑にならない様に…、少し「魔法」を掛けてゆきます。』


……魔法?


『――えぇ。でも貴方には、…この魔法が掛からない…。だから、ご挨拶をと…』


よく分からねぇが…
達者でな…?
せっかく助かったんだ、
元気でやれよ…


『――有り難う。』


あぁ…


『――…ごめんなさい…』


…あぁ…


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