記憶 ―黄昏の蝶―
あぁ…
馬鹿な夢を見た。
そう思った。
しかし、
目が覚めると俺は自分のベッドに寝ていた事に驚いた。
昨夜、ベッドはユピテルという男に譲ったはずだった。
「――…!?」
姿はない。
俺は慌てて食堂へと急いだ。
「――アイツは!?」
勢い良く開いた扉。
それに驚き、その場に居た誰もが目を見開いていた。
息を切らせた俺に声を掛けたのは、ビビだった。
「…どうしたのよ、リュウ。寝巻きのまま、そんなに慌てて…」
「――アイツは!?まさか本当に行っちまったのか?」
食堂を見回してみても、そこにユピテルの姿は無かった。
朝食を摂る子供たちが、きょとんと俺を見ている。
「…アイツって、誰の事を言ってるの?カイトの事なら、未だ寝てるわよ?」
「――違う!人柱の事だよ!昨日、俺が連れてきた奴…」
俺はそう必死に問い掛けたが、ビビは困った様に笑っていた。
「――…珍しい…。リュウが、寝惚けてる…?」
「…はぁ?おいおい…」
何かがおかしい。
知らない筈がない。
「…光の子であるリュウが『寝惚ける』筈がなかろう?どうしたんじゃ、リュウ…」
じぃさんはそう首を傾げた。