記憶 ―黄昏の蝶―
そうだ、
俺の見る夢は、白い世界。
その夢に、
誰かが登場する事は無い。
じゃあ…
あの声は一体何だったのか?
「…じぃさん、アイツは?」
「はて?」
…何なんだ…
昨日の出来事は!?
何故、皆が分からないのだ?
「――昨日!俺が人柱の氷を割った『中身』だよ!」
俺は怒鳴る様に、
じぃさんの前に歩を進める。
「……あぁ、中身なら。わしが預かっておるよ?ほれ…」
そう言って、
じぃさんが懐から大事そうに取り出したのは、「小さな箱」で。
「……これの事じゃろう?」
「…は?何だよ、それ…」
そんな箱に見覚えも無ければ、
俺が求めていたのは、そんな答えじゃない。
「何って、蝶々の羽根じゃ。」
箱の中には、
古い図鑑でしか見た事が無い、蝶々という昆虫の羽根が入っていた。
いやいや、
確かに蝶々の話には昨日もなったけどさぁ…
ふと、あの声が、
俺の頭の中に流れる様に蘇る。
『「魔法」を掛けて行きます』
「……じぃさん、ちょっと2人で話がある…」
頭が…混乱する。
俺は片手で頭を抱え込み、
もう一方の手では院長室を指差した。