初めての恋に溺れる人魚~my first love~
けど、私の性格上、さっきの露天商にひっかかった時と同じように、なかなか断るっていう行為が出来ない。
音楽の授業以外で誰かに声を聞かせるなんて、かなり恥ずかしいけど……
大きく深呼吸をして、スーッと息を吸い込む。
私は唄いはじめた。
「震えてる……」
「え?」
彼の声に唄を止める。
「声、震えてる」
彼の言うとおり、緊張で声は震えるし、さっきよりもぜんぜん声が出ない。
「す……すみません」
何だか怒られたみたいに感じてしまって、しゅんとなる。
ザザーン、ザザーンッ……
波の音だけが響いてる。
と、
「お前さ……」
しばらくの沈黙の後、彼が口を開いた。
今度は、何を言われるの……?
やっぱり下手だな、とか……?
ドキドキとビクビクがピーク。顔を下に向けて、目をぐっと閉じる。すると、
「綺麗な声してるね」
なんて、予想してなかった、彼の言葉。