初めての恋に溺れる人魚~my first love~


「じゃあ―…響が以前、とある世界で活動していたのは……知っていますか?」


「はい―…ピアニストだったんですよね……」


この事実だって、知ったのはほんの数日前。


「響は今、ピアノを弾くことがありますか……?」


「―…はい」


まだ数える程しか月島先輩がピアノを弾いている姿を見た事がないけど―…私はこくりと頷く。

その瞬間、綾さんが一瞬、ホッとした表情を見せた。

月島先輩をよく知っているからこそ、そんな表情が出来るのだと思う。

そう思うと、


「月島先輩が以前、ピアニストだった事は知ってます。だけど―…その事を月島先輩本人からちゃんと聞いたことはないんです。それに―…彼女って言っても、本当に最近で―…」


そんな言葉が私の口から出ていた。

言いたくなかった筈なのに、どうして綾さんに正直に言ってしまったのか―…自分でもよくわからない。

ただ、その事をちゃんと綾さんに言わないと、心に何かひっかかっている感じだったから―…


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