初めての恋に溺れる人魚~my first love~

人魚姫。

どんなお話だったかな―…

ストーリーを思い出しながら、天から滴る無数の粒が海へ零れていくのをただただ見つめる。

と、


「あ~あぁ、急に降って来たねぇ」


声がした。

振り返ると、黒ずくめの女性が立っていた。


「さっきまでは晴れていたのにねぇ」


「―…」


しゃがれた声。真っ赤なルージュ―…

まさか、あの時の露天商のおばさん―…?

でも、今日は何も持っていない。手ぶらで立ってる。


「あ、あの―…」


震える唇で、声をかけた私。


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