わたしをみつけて
「ただいまー」
「お帰りなさい。遅かったのね」
「うん、ちょっとね。
あ、これキャベツおまけしてくれた」
「まぁ。ありがたいわね。明日はロールキャベツにしようかしら」
「うん」
「ごちそうさまでした」
いつもより少し遅めの夕食を終えて、二人分の食器を洗う。
洗い物はいつも私の仕事だった。
「なんだかいすみ、最近楽しそうね」
テーブルを拭きながらお母さんが言った。
「うふふ。そうだね、分かる?
お母さん私ね、友達が出来たの」
「まぁ…!」
目を真ん丸にして本気で驚いているお母さん。
テーブルを拭く手も止まっている。
「よかったわ…。お母さん心配してたの。
いすみは昔の私に似ていて人見知りで引っ込み思案だから。
このまま一生友達が出来なかったらどうしようって…。
本当によかったわね」
「ちょっとお母さん。泣かないでよ。なんか私、すごく可哀想な子みたいじゃない」
嬉し泣きをするお母さんをなだめながら、実は私も泣きそうになっていた。
ずっと一人だった私に出来た初めての友達。
これからの学校生活はきっとすごく楽しいものになる。
そう思っていた。
この数日後、由利が突然消えることになるなんて。
この時はまだ知るよしもなかった。