わたしをみつけて
First day
ガヤガヤガヤ…
教室は今日もにぎやかだった。
昨日観たドラマの話、有名人の熱愛報道の話、ゲームの話、どこかに遊びに行く話。
色々な話題が飛びかよう。
由利の周りには今日も、沢山の人がいた。
由利はいつも輪の中心にいて楽しそうに話をしている。
でも今日の由利はいつもと様子が違った。
皆と話はしているものの、心はどこか別の所にあるかのようで、話をふられても「うん」とか「そうだね」と言うだけ。
周りの人達は自分達の話に夢中で誰も気づいていないようだ。
どうしたんだろう…。
由利の様子は放課後になっても変わらなかった。
皆が帰って二人きりになった教室。
いつもは由利が帰ろう、と言ってくれるけど今日は違う。
由利は椅子に座って机に肘をつき、窓から外を眺めていた。
「由利」
声をかけた。
由利はゆっくりこっちを見る。
「あの、帰ろう?」
「あ…うん」
「今日の小テストは簡単だったね」
「そうだね」
「…明日も簡単だといいよね」
「そうだね」
「…あ、あの。私、今度漢検受けようかなって思うんだけどどうかな?」
「そうだね」
「…」
歩く足を止めた。
由利は私が止まったことに気がついていないのか、そのまま歩いていく。
由利の様子はやっぱりおかしくて、それもだんだんひどくなってきている様だった。
いつもの笑顔は無く、思い詰めた顔をしている。
話も全く聞いていない様だ。
「ん?どうしたの?」
数メートル先に行った所で、私が止まっていることにようやく気がついたのか、由利が振り返った。
「ねぇ由利。何かあったの?今日の由利、変だよ」
「…」
「前にも言ったけど何かあったなら相談して?」
由利は私をじっと見ている。
私も由利をじっと見返した。