わたしをみつけて
プルルルル プルルルル
電話が鳴ったのは、塾が終わり、家に帰り、お母さんと一緒に夕飯を食べて、更にはお風呂にも行って、自分の部屋で宿題をしていた頃の事だった。
受話器を上げられていない電話はまだうるさいくらいに鳴っている。
そういえばお母さんは今、お風呂に行ってるんだっけ?
無視しようかな。
そう思って少し待ってみたものの電話は一向に止む気配はない。
電話に出るのは苦手だけどお母さんが出れないんだから仕方がない。
小さくため息をつくと、まだうるさく鳴っている電話に出るため、部屋を出た。
「はい」
『もしもし。間宮さんのお宅でしょうか?
私、○○高校の田口と申します』
電話はクラスの担任の先生からだった。
何も悪いことはした覚えはないけど、もしかしたらと少し不安になる。
「あ、はい。いすみです」
『いすみさん?丁度よかったわ。聞きたいことがあるの』
電話越しに聞く先生の声は少し震えているような気がする。
口調もいつもより早口で焦っている様に感じられた。
「どうしたんですか?」
『あなた最近仁科由利さんと一緒に帰っているわよね?今日も一緒だったの?』
「え…。あ、えっと。
今日は途中まで一緒でした。でも由利が携帯を学校に忘れたからとりに戻るって。
私は用事があったんで先に帰りました」
『そう…。仁科さんは携帯を忘れたから学校に戻る。
そう言ったのね?』
「は、はい」
『他には?何か言っていなかった?』
「いえ、特には…」
それっきり先生は黙ってしまった。
先ほどとは違う、言いようのない不安が胸の中に渦を作る。