わたしをみつけて


「それで何があったの?」

少し落ち着いたのを見て、母は手を膝の上にそっと置いてきた。

その言葉に再び下を向き黙ってしまう。
先程の電話を思い出して体が震えた。

母は膝に置いた手をそのままにして、もう片方の手で小さく震える背中を撫でてくれた。

どれくらいの間そうしていただろうか。

手に持ったグラスの水はすっかり氷が溶けてしまい、グラスの表面に水滴を作っていた。
その水滴が落ち、ズボンに小さなシミを作っている。

「あの、ね」


震える声で話し出した。


「前に友達が出来たって言った、でしょ」

「えぇ」

「その友達が、ね…?
帰ってないって…。携帯を取りに来てもなくて、どこに行ったのか分からないって…」


自分でもよく分からない説明だったと思う。
でも今の私にはこれが精一杯だった。

母は驚いた顔をしながらも、意味不明な話を聞いてくれた。

全て話終えた時には大分落ち着きを取り戻して、普通に話せるようになっていた。


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