わたしをみつけて
教室は先生先生の大合唱だ。
学級委員が静めようとするがそんなもので静まるはずもない。
「分かりました。
今からその話をするからとりあえず席に着きなさい」
その言葉を聞いた生徒たちはぞろぞろと席に着く。
全員が席に着いたことを確認すると田口先生は静かに話し始めた。
「仁科さんが家に帰っていないことは事実です。連絡が取れないことも」
「じゃあやっぱり由利は何か事件に巻き込まれたの?」
「それはまだ分かりません。詳しいことは今、親御さんや警察の方が調べているところです。
だから今はこれ以上騒ぎ立てないで、いつも通り過ごしてください」
HRが終わり、一時間目は自習になった。
田口先生は大人しく自習をするように言って教室を出て行ったが、そんなわけにもいかず、当たり前の様に騒がしかった。
真面目に自習をしている子などほとんどいない。
私もとりあえず教科書とノートを広げていたが、やる気が出ず、ぼんやりと眺めていた。
一日が終わる頃には皆、少し落ち着いたようで、部活に行く子やおしゃべりをしながら帰る子がいた。
私は由利の席をじっとみていた。
由利はいない。
以前は一人で帰ることが当たり前だった。
寂しく無かったと言えば嘘になるが、仕方がないと割りきっていた。
だけど由利と帰る様になってからは、いつの間にかそれが当たり前になっていた。
その由利がいない。
こんなにも由利の存在が大きかったなんて…。
私は下を向いた。
今にも泣きそうな、こんな顔をみられたくはない。