わたしをみつけて
そうやって皆が教室から出ていくのを待っていると、急に机に影が出来た。
顔を上げるとそこには林さんが立っていた。
少し後ろには林さんと仲のいい美島さんも立っている。
林さんは学級委員では無いが、クラスのリーダー的存在で、思ったことはすぐ口に出すし、おかしいと思ったことにはおかしいと言う、しっかりしていて気が強い人だ。
私は正直、怖くて苦手な人だった。
「ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど」
表情は厳しく声も冷たい。
「な、何…?」
「間宮さんさ、最近由利と一緒に帰ってたよね。昨日も一緒だったんでしょ。
何か知らないの?」
昨晩、田口先生に聞かれたことと同じことを聞かれたので、先生に話した内容をそのまま話した。
すると林さんの顔がみるみる曇っていく。
「…ってことなんだけど…」
「……でよ」
「え?」
「何で昨日一緒に行かなかったのよ!」
林さんは鋭い目で私を睨んだ。
少し目が赤い気がする。
「あんたが昨日一緒に行ってれば!
こんなことにはならなかったかも知れないじゃない!
どうして…っ」
最後の方はもう言葉になっていなかった。
目から一粒、涙が落ちる。
頭を後ろから殴られた様な気がした。
八つ当たりだ。
それは分かっている。
だけどもしかしたら?
着いていっていたのなら…
もっと早くに…
"私のせい?"
「こーら塔子。
間宮さんのせいじゃないでしょ」
美島さんの声がした。
「うるさいっ。円香は黙っててよ!」
「うるさくないし黙らない。八つ当たりはよくないよ」
「…っ」
バツが悪くなったのか、林さんは私をもう一度睨み付けると教室を出ていってしまった。