わたしをみつけて
初めて話をしたのは修学旅行の自由行動の話し合いの時だった。
「ここ行った後はここに行って…」
「ここは絶対外せないだろ」
「じゃあここでお土産買おうよ」
修学旅行のグループはクラス班のメンバーと決まっていたから私は由利と一緒だった。
ここでも私は思わず飛び上がってしまいそうなくらい嬉しかったし、すごく緊張もした。
一人ひとりが自分の行きたい場所を言い合い、どんどん話し合いは進んでいく。
「ねぇ、間宮さんはどこ行きたい?」
黙って話し合いを聞いていた私に誰かが声をかけた。
驚いて顔を上げると由利が私を見ていた。
「ぇ…」
あまりの驚きに何も言葉が出ない。
そんな私を由利はじっと見たままだ。
「修学旅行の自由行動、皆どこ行きたいか言い合ってるんだけど間宮さんはどこ行きたい?」
どこに行きたいと言われても…。
私は自分の意見を言う事が苦手だった。
嫌そうな顔をされたら嫌だとか生意気って思われたら嫌だとか、いつもそんな事ばかりを考えてしまい、結局黙ってしまうのだ。
だから今まで話し合いで自分の意見を言ったことは無いし、誰も私に話を振ってこなかった。
いつも端っこの方で黙って話を聞いているだけ。
だけど今日は違う。
意見を求められている。それも憧れの由利に。