わたしをみつけて


「な、何で…」


思わず後ずさった。

ここは行き止まりだった。
正確に言えば、ここにあるのは非常階段だけでそれ以外は教室も、勿論階段もない。
非常階段も普段は鍵がかかっている。

試しにドアノブを回してみたがカチャカチャと音が鳴るだけで開かない。

そこでもう一つ異変に気がついた。


どうしてこんなに暗いの?


女の子を追いかけることに夢中で気が付かなかったのだが、辺りが暗すぎるのだ。

携帯で時間を確かめるとまだ六時四十分。

今は七月だというのに外は真っ暗だった。
夏の六時四十分がこんなに暗いはずがない。


寒気がした。

それと同時にあの女の子に恐怖を覚えた。

とんでもない速さで走り、不気味に笑い、突然消えては突然現れる。

どう考えてもおかしい。


帰ろう。


由利のことは気になったがもうそれどころではない。

とにかく帰ろう。

あの女の子に会わないうちに。

非常階段に背を向けて一気に走ろうと足を一歩出した時。












トントン























背中を誰かが叩いた。



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