わたしをみつけて
話が終わっても誰も何も言わなかった。
出ていこうとしていた林さんも屋上の扉にもたれ掛かり腕を組んでいる。
私は考えていた。
昨日の女の子はきっとこの話の女の子だろう。
由利は忘れ物を取りに来てそしてあの女の子にどこかへ連れていかれたんだ。
だけど…
じゃあどうして私は無事だったの?
風の音だけが聞こえる屋上。
その沈黙を破ったのは林さんの鼻で笑う音だった。
「私は信じないね。
大体そんなに人が行方不明になってるならもっと騒ぎになってるでしょ」
「でも実際聞くじゃん。
どこどこの学校で行方不明になった子がいるって」
「じゃあ聞くけどさ。
円香は行方不明になった人の名前知ってるの?
いつも聞くのは行方不明になったらしいって話だけ。実際行方不明になった人の名前、誰一人として知らないでしょ」
「うーん…そこなんだよね」
美島さんが軽く眉を寄せる。