わたしをみつけて


もしかして助けてくれたの?


何がどうなったのかよくわからない。

そんな顔で由利を見ていると視線に気づいたのか、由利は私の方を見ると、ペロッと小さく舌を出した。















「あの…!仁科さん」


放課後、一人になった由利に勇気を出して声をかけた。
由利は人気者だからいつも周りに人がいる。
それがいなくなるのを待っていたら放課後になってしまった。


「ん?おっ間宮さんだ。どうしたの?」


声をかけたものの、いざとなるとやっぱり緊張する。
でもどうしても言いたいことがあった。


「あの…た、助けてくれてありがとう…ございます」


これまた聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声だったけど由利には聞こえたようだった。


「へ?助け…?
…あー修学旅行の話し合いの時の事か」


由利はニコリと微笑んだ。


「助けたわけじゃないよ。実はね、私もちょっと気になってたんだよね。だからお礼とかいいよ」


ペロッと舌を出す由利。


「それでも私に話を振ってくる人なんていなかったから…。その、ちょっと嬉しかった…です。だからありがとうございます」


由利は一瞬、きょとんとした顔をした後、笑い出した。


「あははっ。そっか!うん、分かった。そのお礼は受け取っとくね!」


「は、はい。ありがとうございま…」


「ちょっと待った!」


由利がまた私の言葉を遮った。
少し、怒ったような表情をしている。

私、何か気にさわること言ったかな…?


「その敬語やめない?同じクラスなんだし気楽に仲良くやろうよっ!
あと私の事、仁科さんって呼ぶのも無し。由利でいいよ。
私もいすみって呼ぶから」


「え…」


『いすみ』
私の名前。
今まで私をそう呼んだのは家族以外にいなかった。
名前で呼び合うような友達がいなかったから。


「あれ、もしかして嫌だった?」


「嫌じゃないです!嬉しい…。ありがとうございま…じゃなかった。ありがとう…!」


嬉しくて嬉しくて。
涙が出てきた。
嬉し泣きをしたのは初めてだ。


「そんな泣かなくても…。あはは、いすみって面白いね」









私に初めての友達ができた。

一緒に映画を観に行ったり、ご飯を食べたり、プリクラも撮った。
初めての事ばかりで戸惑う事が多かったけど由利はいつも優しかった。


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