destiny
俺が初めて彼女を見たのは高1の夏休みの前だった。期末テストも終わり、あとは夏を迎えるだけで、少し浮かれた空気の廊下。
「あれ、夏目さんじゃん。」
と高校に入ってからの友達、翔が言った。
「何言ってんの?」
夏目は俺じゃん。と言うと、翔は少し呆れる。
「そうじゃなくて。もう一人の夏目のこと。大樹知らないの?」
「知らない。」
この学年に夏目は俺だけじゃないのか。
「けっこー有名だよ。美人だって。」
「お前はそういう情報一体どっから手にいれるんだよ。」
「大樹が疎すぎるんだよ。」
さっき翔が指した方を見ると、女子が数人かたまっていた。
「どれが、もう一人の夏目さん?」
「うーんと、あの黒髪の子。今後ろ向いちゃってるね。こっち向かないかな。」
その後ろ姿は凛として美しかった。真っ直ぐ伸びた黒髪は艶がある。すらりとした四肢に思わず見とれる。
すると休み時間の終わりを告げるチャイムがなった。
ふわりと振り向いた彼女の顔を見て俺は恋に落ちた。まっ逆さまにストーンと。