図書室の白川さんー星ヶ丘高校絵巻ー
あけみちゃんは、意外そうな顔をして

オレと白川さんを見比べた。


「あれ、あんたたち知り合いだった?」

「知り合いっつーほどでもないけど、ねえ?」




白川さんに同意を求めてみたが、白川さんは


あいまいに笑って首をかしげていた。


「ふーん、まあいいや。本を読もうって気になっただけでも

たいしたものだわ。というか、絶対読んでおいたほうがいいから。

受験勉強の一環としてでもいいし、息抜きでもいいし

とにかく読んでおいて損はないから。

白川、なんか中迫にお勧めを教えてあげたら?」


あけみちゃんの言葉に、白川さんがえ、という顔をする。


「そーそー。オレ、何読んでいいかわからないからさ。

なんかお勧め教えてよ、白川さん。」


白川さんは、「でも…」と小さくつぶやいてうつむいていたが


あけみちゃんに「ほらほら」と促されて、しぶしぶ席を立った。


白川さんは、オレのほうをちらりと見ると無言で歩きだした。


オレは慌てて後を追う。


…しかし、しゃべんない子だなあ。


頑なな後姿をオレはしげしげと眺めた。


白川さんがふと、振り返った。


「どんなのが…。」


相変わらず目を見ないまま、白川さんは小さな声で言う。


一瞬何のことかわからなかったが、本の種類を指していることに


オレは気づいた。


「あー。えーと、うーん。ドキドキハラハラ…みたいな?」


本当は、読みたい本なんてこれっぽっちもなかったので、


オレはしどろもどろになって答える。


本当、オレはなんで図書室なんて来たんだろう?
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