図書室の白川さんー星ヶ丘高校絵巻ー
三日後、オレは図書室に「海と毒薬」を

返しに行った。


20ページ読むのに、三日かかり


それ以上はページをめくる気力が起きなかった。


結局、海の話だったのか毒薬の話だったのか


ちっともわからなかった。





からから、と図書室の扉をあける。


今日はあけみちゃんはいなかったが


白川さんと、この間の二年の同系女子がまた、ちんまりと


カウンターに座っている。


白川さんがあ、という顔をする。


「あー、白川さん。これ、返しに来たわ。」


カウンターに「海と毒薬」を置く。


白川さんは事務的に「はい。」というと、オレの顔を見上げる。



…。



…。



オレはやっと、感想を求められているのだ、と気づく。



「あ、えーとなんつーか。毒がね。うん、毒が怖いよね。」


オレは、適当に感想を述べる。


白川さんは、となりの女子と顔を見あわせるとふふっと、笑い合った。


小動物みたい…


オレは似たような雰囲気の二人を見て思う。


「や、なんかさ。もうちょっと、おもしろいのないかなーってさ。」



まだ、借りるつもりか、オレ。



自分でも、ちょっと呆れたが


これでは、あけみちゃんに鼻で笑われること必至だ。


オレにも読める本を紹介してくれ、白川さん。
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