図書室の白川さんー星ヶ丘高校絵巻ー
「図書委員のさ、白川さんって知ってる?」


オレの言葉に、秀真がきょとんとした顔をする。


「白川って、しらかわみずほ?」


「下の名前、知らねー。でも、たぶん。そいつ。」


そういえば、白川さんの下の名前をオレは知らなかった。


みずほって言うんだ。


かわいい名前。


完全に名前負けだな。


オレは、白川さんの小動物みたいな顔を思い出し


くくっと含み笑いをする。


秀真が、そんなオレを気味悪そうに見やる。


「なに、みつるくん。白川に手ぇ出してんの?」


「違う、違う。そーいうんじゃないけどさ、おもしろいの。


絶対、図書室にいてさ。なんか図書室の小人みたい…。」


ふーん、と秀真はわかったような、わからないような顔をする。


「白川って超頭がいいやつだろ。オレ、中学いっしょだったけど


確かその頃から、頭いいって噂だったもん。でも超地味だし


いるかいないか、わかんねぇ感じだよな。」


うん、まさにそんな感じだ。

秀真の言ったことは的を得ている。


だけど、あの格技場で聞いた声は、まっすぐで

そりゃ、もう圧倒的な存在感だったんだぜ。


でも、それは秀真には言わない。
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