図書室の白川さんー星ヶ丘高校絵巻ー
その日もオレは、廊下の端っこを


つんのめりそうに歩く白川さんに手を振った。


「今日、図書室行くし!」


白川さんは、小さな目でオレをちょっとだけ見上げて、通り過ぎた。


「誰、あの子?」


オレの隣にいた女子が、言う。


「え、知らないー。なんか、今めっちゃ無視じゃなかった?」


ほかの子がいい、きゃはははと甲高い笑い声があがる。


「いいの、あれで。オレ、別に無視されてないから。」


オレは、白川さんをかばうみたいに言う。


甲高い笑い声や、とげとげした女子の声が


白川さんの頼りない背中につきささるみたいで、


オレはちょっと胸が痛くなる。


今の、聞こえてなければいいな。


オレはもう見えなくなった、白川さんの背中を思う。


オレのまわりの女子たちも


今、目の前を通った地味な女の子とことなんか


すっかり忘れているみたいで、


昨日観たテレビの話題で盛り上がっていた。






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