図書室の白川さんー星ヶ丘高校絵巻ー
オレは三日おきくらいで


図書室に通った。



白川さんはいつもカウンターに座っている。



あけみちゃんはいることもあったし、いないこともあった。


カウンターに座っている生徒は二人の時もあり三人の時もある。


その子たちは図書委員の子だったり、そうじゃない子もいると


いうこともわかった。


なんとなくみんな、同じような雰囲気を漂わせている。


この間、あけみちゃんと話していると



「あの人、いつも来るけどみずほちゃんの友達なの?」


とコソコソした声が聞こえてきた。


白川さんは堂々と「んーん、友達ってわけじゃないけど。」


と答えて、オレは少しだけがっかりした。


「ひでー。」


とふてくされた声をだすと、周りの子はくすくすと笑っているのに


白川さんだけは、何がいけなかったんだろうと言うような、きょとんとした


顔をしていた。



 「若きウェルテルの悩み」 ゲーテ


 「ライ麦畑でつかまえて」 サリンジャー


 「黒い雨」  井伏鱒二


 「蛍川」 宮本輝


 「氷点」 三浦綾子





たくさん、借りたけど



結局、あんまり読んでない。



図書室に通っているうちに



だんだんと白川さんの顔がけわしくなってきた。



露骨に「またきた」というような顔をする。



「読んだよ。読んだ。おもしろかったわー。痛快だったわー。」


と「氷点」を返しながら言ったときには、


上目づかいに、じろと睨まれてしまった。
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