図書室の白川さんー星ヶ丘高校絵巻ー
友達と買い物に行く、とかで


みすずはオレを置いて、さっさと帰ってしまった。



秀真はサッカー部の引退式があるとかで、放課後そっちに行ってしまった。


普段、部活出ていないくせに、こんな時だけ先輩面かよ


と憎まれ口をたたくと、


「ユーレイ部員でも、後輩からの指示は絶大なの。」


と、ホントかウソかわからないことを言っていた。


…つれないでやんの。



たまには、早く帰りますか。


明日から地獄の夏期講習だ。…たぶん、授業中、寝ちゃうけど。



そんなことを思いながら、下駄箱を出ると、


白川さんがものすごく不自然な動作で、行ったり来たりしていた。



「…何してんの、白川さん。」


声をかけると、白川さんははっとしたように顔をあげると、


つかつかとこっちに歩み寄ってきた。


鞄の中からがさがさと何か引っ張り出して、オレに差し出した。



 「13歳のシーズン」 あさのあつこ



「…何、これ?」


「あの、中迫君にどうかなと思って家から持ってきた。」


目を見ないまま、早口でまくしたてるように言う。


ふーん、とオレは受け取って、ぱらぱらとめくってみる。


「オレ、18歳なんだけど。」


こころなしか、今までの本よりも、並んでいる字が大きい。



「…でも、中迫君の読書力だと、それくらいが限界かな、って。」


…13歳レベル、ってことね。


はい。否定はしません。


ちら、と上目づかいでオレをみる。


「でも、それいい本だから。私もまだ時々読み返すし。読んでみたらいいと思う。

学校の図書室にはないから、家から持ってきた。うん、あの…返すの、いつでもいいから。」


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