図書室の白川さんー星ヶ丘高校絵巻ー
みすずとは、時々会った。


塾の前にお茶をしたり、買い物に付き合ったりだとか


そんな程度だけど。


キスもセックスもしないまま、夏が終わった。


私服のみすずは大人っぽくてかわいかったけど


オレとは違う、塾の校舎に入っていく後姿は


何だか知らない人のようで、少しさみしかった。


あれ、オレこんなにセンチメンタルジャーニーだったっけ?



高校最後の夏休みが終わるからだろうか?


もう二度と戻ってこない18歳の夏休みを


とっても無駄に過ごした気がする。


あ、そういえば白川さんに借りた本を読んだ。



 「13歳のシーズン」 あさのあつこ



13歳向けに書かれているからだろうか、


読書に慣れていないオレにもすらすらと読めた。


13歳の多感な少年少女が、いろんな出来事を通して


大人になっていくという、まあ、簡単に言えばそんな


内容で、さすがにオレも13歳のやつらに対して


そんな感情移入できたわけじゃないけど、


それでも、とてもおもしろく読めた。


時折、一人で「わかるわー」などと


相槌を入れたりしながら、あっと言う間に読んだ。



ふと、見上げると空がすごく高い。


風はなまぬるいし、照りつける日差しはまだまだ暴力的だけど



それでも、秋が来ているんだなとオレは思った。


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