図書室の白川さんー星ヶ丘高校絵巻ー
格技場の扉があいている。

掃除が行き届いた、つやつやの板目。

使い込まれたサンドバックがぶら下がっている。

そういえば、今の二年生、

空手部でやたら強いのがいるって話だっけ?

おまけに男前なんだそーな。

オレたちのクラスの女子も騒いでた様な気がする。

そいつが自主練でもしてんのかな。


何気なしにオレは格技場を覗き込んだ。


「…だから、私は図書委員になって…。」


突然澄んだ、高い声が聞こえて

オレはぎょっとなって立ち止まった。

そっと、格技場の中を見ると

奥の方に人影があった。

奥の隅の方にいるので、よく見えない。

女子であることは間違いない。


「私は本が好きです!」


透き通った声が、まっすぐオレの胸をさした。



ああ、こんなまっすぐな声、久しぶりに聞いた。



「何やってんの?」

気づいたら、オレはそう口に出していた。

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