記憶をなくしたピアニスト

『おまえ今どこにいるの?』
氷室が言う。

「そうそう、
移動できねーから、結局、星宮空港のとこに」
俺は、ガラス張りの空港のフードコートで、一人窓のそばに座っていた。

『そうか、早くこっち来れるといいけれどな』

「ああ。
でも、この調子じゃ当分無理そうか?」

『おまえ、誰に問いかけてんだよ。俺はもっと知らねえ。』

「知らねーよ。俺は」

知らねーよ。

知らねーよ。

知らねーよ。

分かんないから俺は自分に
問うしかない
< 15 / 28 >

この作品をシェア

pagetop