記憶をなくしたピアニスト
『おまえ今どこにいるの?』
氷室が言う。
「そうそう、
移動できねーから、結局、星宮空港のとこに」
俺は、ガラス張りの空港のフードコートで、一人窓のそばに座っていた。
『そうか、早くこっち来れるといいけれどな』
「ああ。
でも、この調子じゃ当分無理そうか?」
『おまえ、誰に問いかけてんだよ。俺はもっと知らねえ。』
「知らねーよ。俺は」
知らねーよ。
知らねーよ。
知らねーよ。
分かんないから俺は自分に
問うしかない