記憶をなくしたピアニスト

「琴乃が行方不明、か」


そんなことあるわけないんだから。




俺はまだ、

ひとりの妹を失うことを知らない――・・。


俺の記憶は、今は思い出したくもないから。

これ以上、新しい、妹との記録が脳内に残ることはないというのに。

俺は、知らない。

俺の脳内で、水がはためくような

そんな美しい音色が流れていた。
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