記憶をなくしたピアニスト
夜なのに、
そこは変に明るい。

でも普通の。
でも小学校みたいな

音楽室だった。


ピアノの前には、色白の、不思議な少女が
座っていて。

「……姉さん?」
一瞬、姉に重なって見えたが、
違う人のようだ。

(何の曲だ、これ?)


「ああ……。

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番――?」
俺の言葉に、
少女はちらりと俺に目をやり、手を止めた。

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