タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
両手でこぶしを握り、声を裏返しながら懸命に力説する王子。


扇越しのアザレア姫の目が、ねめつけるように王子を見る。


「本当に誓いますか?」


「もちろん!」


「わたくしにそれを証明してくださいますね?」


「もちろん!」


姫の目が、キランっと光った。


「では竜神王の目を見事、手に入れてきてください。その証明が果たされるまでは婚儀は無しです」


・・・カウンター返ってきたあぁーー!!


「もちろんだとも! 姫!!」


・・・乗せられたあぁーーーー!!


この王子、まんまとハメられたぁぁー!!


「よかろう! スエルツよ、姫の思い通りになって竜神王の目を手に入れてくるがよいわっ!!」


まぶたばかりか、頬までビクビク痙攣させながら王が叫ぶ。


真っ赤な顔で勢いよく立ち上がった王に向かい、王子が元気に返答した。


「はい! 父上ありがとう! ボク頑張りますから!!」


応援してもらってるわけじゃないわよ、バカ王子っ!


なに勘違いして喜んでんのよ!


どこまでも明るい息子のバカッぷりにトドメを刺された王様は、もう、憤まんやるかたない。


ドスドスと足音も荒く、事態の急転に硬直している貴族たちを無視して会場から出ていってしまった。

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