タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
目を三角形に尖らせながら、あたしは声の主を睨み付けた。


その視線の先には、床まで届くほど長く白いローブを身にまとった男性の姿が。


・・・この衣装、神官?


彼が胸から下げている、大きな丸い金の彫刻のペンダントが目にとまった。


あれは最高位の神職の証だ。


あ、じゃあひょっとして、この人が・・・。


「セルディオ、お前か」

「陛下、いえ、父上」


父上? ・・・やっぱり。


この人がうわさの、セルディオ第二王子か。へえぇぇ~~。


あたしは、つい怒りを忘れて男性の姿をまじまじと見つめてしまった。


それというのも・・・


スエルツ王子の弟。

このセルディオ王子は、国内でも有名な出来のいい王子様なんだ。


見た目も、頭の回転の速さも、剣の腕前も、かなり優秀。


王様の血を濃く継いだって、もっぱらの評判だ。


しかもこれが、性格まで良くできている。


なんでも王位継承の争いを避けるため、自ら王様に願い出て、神職について。


そんで、さっさと継承権を放棄してしまったらしい。


なかなかできることじゃないよ。立派だよ。


それに顔立ちも整ってるし、金髪だし、華やかで人目を引く。


カリスマ性ってやつを備えているんだ。


・・・できればコッチの王子様の方に、王位を継いでもらいたいなー。


いち国民として、あたし切実に、そう思います。

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