タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
ドキドキしながら両目をゆっくり開けてみると、そこに意外なものを見つけてしまった。


丸みを帯びた両耳に、目の周りの黒いマスク。


小柄でふわふわした生き物が、つぶらな黒い瞳であたしをじっと見つめている。


豊かな茶褐色の毛皮が日の光を浴びて、まるで黄金のように輝いていた。


タヌ・・・・・・キ・・・・・・?


うわあ、これが有名なタヌキ山のタヌキか! 生きているのは初めて見た!


なんて綺麗! これなら上流社会の人間たちが、競って手に入れたがるのも分かる!


――ガサガサッ、ガサッ


感動してたら、次々と草陰からタヌキたちが姿を現し始めた。


二匹、三匹、六、七・・・わわっ、まだどんどん集まってくる!


いったい何匹集まってくるの? タヌキの集団だ!


大勢のタヌキの群れにグルッと取り囲まれて、あたしは一気に不安に陥る。


だ、大丈夫よね? タヌキって雑食らしいけど、人間は食べなかったよね?


・・・処刑も生贄もイヤだけど、タヌキのエサもイヤ!

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