タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
あたしは広げていた両腕を力無く下ろし、立ち去るブランの背中を、ただ、見つめていた。


泣きたいほどの苦しい気持ちが、心の底から込み上げてくる。


ブラン、ブラン、待ってよぉ。


そうじゃない。違うんだよ。これには訳が・・・。


「あの男も、どうやらずいぶんとお前にご執心のようだ」


叫んで駆け寄りたいのをこらえているあたしの耳に、王子の小声が聞こえた。


「そこを利用して、うまく手なずけて働かせろ。いいな」


あたしはブランの背中を見たまま、ギュッと唇を噛みしめる。


王子があたしの横をすり抜け、スエルツ王子やアザレア姫の元へと歩いて行った。


そして、何食わぬ穏やかな笑顔で談笑している。


・・・・・・辛くて、悔しくてたまらない。


密かにセルディオ王子を睨み付け、こぶしを握りしめた。


とんでもない事になってしまった。


旅に同伴して、無事に帰ってくればいいだけのハズだったのに。


なんとしても秘宝を見つけなければならない。


しかもブランには全部を秘密にして。


秘宝なんて見つけちゃダメだって、あんなに何度もブランに念を押していたのに。


いったいどうやって説得しようか。


あたし、嘘をつくのがヘタくそだし、うまく丸め込める自信なんかない。


事情を勘づかれてしまったら、どうしよう。

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