タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
勘づかれないまでも、そんな不審な態度をセルディオ王子の手下に見咎められたら・・・。


不安ばかりが胸に渦巻く。


それに、アザレア姫。


ごめんなさい。こんなことになってしまった。


姫の味方になるつもりだったのに。


これからあたしは、あなたを裏切らなければならない。


・・・・・・・・・・・・。


タヌキたちも、アザレア姫も。


あたしは、いつも誰かをだまして裏切ってばかりだ・・・・・・。


「シーロッタ・ヌゥーキー男爵夫妻ー! そろそろ行くよー!」


スエルツ王子が大きく手を振り、あたしに向かって出発を知らせる。


ノロノロと重い足取りで、港まで移動する馬車に近づいた。


セルディオ王子の穏やかな表情に隠れた、冷たい視線が突き刺さるのを感じる。


あたしはわざと顔を背けて、視線を逸らしてやった。


逸らした先に、ブランの姿を見つけて胸がドキリとする。


ブランはやっぱりなにかを訴えたそうな目をして、あたしをじっと見ていた。


あたしも、懸命に思いを込めてブランを見つめ返す。


あたしたちは、伝えたいことを何ひとつ伝えられぬまま、その場に立ち尽くしていた。


ブラン、ねぇブラン、あたしは・・・


「シーロッタ・ヌゥーキー男爵夫人、・・・くれぐれも・・・よろしく」

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