タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
今にも船から落っこちそうになりながら、あたしは嘔吐感に身もだえた。


胃が、胃が引っくり返るぅ~。


体の中で全ての内臓が、好き勝手にダンスを踊ってるぅぅ~。


うええぇっぷぅーー!


ブランの色白な顔も、白を通り越して青くなっている。


そんなあたしたちに、船の揺れは容赦なく襲いかかった。


ひー! 船ってこんなに揺れる乗り物だったの!? 最っ悪!


誰よ! こんな最低な乗り物発明したのは!?


「シーロッタ・ヌゥーキー男爵夫妻、大丈夫?」


意外にも平気そうな様子で立ってるスエルツ王子。


「なんで? なんでそんなに普通の顔していられるの?」


「ボク、何度も船で外国に渡ってるからね。船酔いって、体質もあるけど慣れの問題だから」


「あたしきっと、その体質ってヤツだわ・・・」


生まれながらにして、船とは生涯、解り合えない体質なのよ絶対。


山の生き物のブランが、悲壮な顔をして王子に聞いた。


「ずっとこのままの状態がマスコール王国まで続くのか?」

「うん。当然」


ムリムリムリムリ! ムリだから!

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