タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
「男爵夫人!」

「なにオルマさん!? 今すごく忙しいんだけど!」

「マスコール王国です!」


オルマさんが海の向こうを指さした。


暴れるスエルツ王子にしがみ付きつつ、あたしはその方向を見る。


陸が・・・大陸が見える! あんな近くに!


あれが滅亡の国、マスコール王国!


――ドオーーーンッ


「・・・・・・・・・・・・!」


船が大揺れして、オルマさんの体が大きく弾み、声もなく海に落下した。


「オ、オルマさあぁーーーん!!」


ああ! そんな・・・・・・!


大きな水しぶきの音がした。


サメは猛り狂い、船を破壊しようと激しい攻撃を続けている。


妖しい歌声は、高く低く、まとわりつくように海上に響き渡った。


「うるさいこの、オンチーーー!!」


あたしは大声でセイレーンに怒鳴った。


とにかく、あの男好きをなんとかしないと! あたしたちは全滅してしまう!


――ボンッ!


変化魔法の音が聞こえた。


ブランが人間の姿から、白タヌキの姿に戻っている。


ブルブルブルっと全身を震わせ、ゼエゼエと荒い息を吐いた。


「よし、人間の男の姿でなきゃ、妖術は効かないらしいな!」


ブランが正気を取り戻した!


「ブラン! あのセイレーンをなんとかして!」

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